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だから言ったじゃないの

 ******* この程度の技術力の電力は原発を運転しないで下さい-Ⅰ-Ⅱ-Ⅲもあります。*******

 福島第一2号機で界磁遮断器がトリップし、所内切替が行えず、冷却水が一時確保できず原子炉水位が2メートル低下したとして、また自家発起動が遅れたとかなり問題になっているようです。
 「かなり問題になっているようです」というのは、東電も今までの冗長気味の、よく言えば手厚い報道から一変して、停止したという 6/17 の第一報以降 7/6 まで20日近く何も発表しませんでしたし、プレスも突っ込む動きがありません。
7/6 の内容も定性的不十分ですが、それまで情報が無く、漏れ聞こえる噂で市民グループが疑心暗鬼になったものです。

 一挙にこれだけのトラブルのそろい踏みと言うのも珍しいと思いますが、ここで「だから言ったじゃないの」と言うのは、微視的には非常用ジーゼル発電機の起動に関してで、巨視的には「筆者に任せればもっとすっきりさせてやるよ」と言いたくなる、種々の原発の不整合です。
 後者は、常識的に考えて明らかに違っている分は除いて、東電プレス文の内容が正しいとして、他との整合を取ろうとするとどうしても不自然な点が出てくる。この点に関するものですから、プレス文が何らかの恣意的装飾を含んでいる可能性もあります。
何れにせよ、発表された内容から言えば、原発と言うのはつくづく不思議な設備だなと思わざるを得ない内容に関するものです。

 微視的「だから言ったじゃないの」は、自家発ジーゼルエンジンのメンテ品位です。
当 blog では、「Broken Windows Theory」「Fix the Broken Windows.」等で「カムシャフトボックスのこの写真は無いだろう。人間に奉仕する機械としての愛情なんか全然かけてもらってない。原発の再起には、何は無くても綺麗に塗装から始めるべきだ」と提言していました。

Antic12

Eyesight

 写真は福島第一3号機のものですが、おそらく2号機も同等かそれ以下なんでしょう。
読者の皆さんも感じてください。ジーゼルとタービンの違いは有りますが、これが普通の現場の自家発の品位です。いやと言うほど緩み止めが施工されています。

Antic21

 福島第一3号機の程度の品位のものに「いざとなったら寸分違いなく回ってくれ」と期待するのは、虫が良すぎます。どの様な不具合が隠れているか、人間にも判りようがありません。
実際に20年5月7日には、起動しなかったんでしょう?
 このようだと、起動が遅れたという話が出ても「さもありなん」と納得してしまいます。

 次いで、自家発起動が遅れたのかどうなのかと言う点についての、腰の引け方です。
 当該事故で、ECCSの起動が如何なる意味でも必要なかったとすれば、自家発起動が遅れたという点は vital importance では無いのでしょう。
事実、炉内水位はタービン駆動隔離時冷却系ポンプにより回復したそうですから。
 しかし市井で「15分かかった」と騒いでいるんだから、「ジーゼル発電機はガスタービンとは違って、起動しても直ちに全負荷を背負える訳ではありません。当該事象時には、所内全停後○秒でスターターが入り、○○秒で定格速度になり、○○秒で定格電圧が確立し、○○秒で第一段の負荷に電力を供給し始めました。」と言えば、皆納得できるのです。
 しかるに、市民グループの東電本社での聞き取りでは「非常用ディーゼル発電機はすぐに立ち上がった。十数分間起動しなかったような報道があるがそうではない。常用の電源が切れ一時制御室も停電したが、非常用ディーゼル発電機が立ち上がり、非常用の電源は使えた。」だけです。
 これは市民グループ側の記録で、要点だけサマリーにして端折っている可能性がありますが、7/6 のプレス文でも「2基の非常用ディーゼル発電設備が自動起動し非常用交流電源が速やかに確保されたこと。」だけです。
 技術屋センスに欠ける、定性表現です。数字が出て来なくても、せめて「規定通り」とかなんとか言えませんか?
もともと眉唾で迎えられる原発の発表です。これでは「じゃあタービン駆動隔離時冷却系ポンプがなぜ回ったんだ?速やかとはどれだけだ、規定通りと言わないのは、巷で言う15分よりは速やかだったと言いたいのか?やはり何か隠しているな」と不信を募らせるだけです。

 続いて事故全体の不自然な点を見ていきます。
ざっと見て次の通りです。それぞれ報告内容が嘘だろうとは言いませんが、少しでも技術現場で働いた人は、「筆者の指摘の方が普通の考えだ」と評価してくれると思います。
 それら各点が東電原発では市民権を得ているとすれば、「原発と言うのはつくづく不思議な設備環境だな」ということになります。

1.送電線の系統安定化装置制御盤内にある温度記録計とは何ですか?
 作業場所が狭隘で、記録計近傍にある送電線の系統安定化装置の所内電源切替え用補助リレーに接触したとなれば、同じ盤内ですね。そんな所に何の温度記録計があると言うのでしょうか。
 普通、送電系統盤に温度記録計は馴染まないとおもいます。送電線近傍の外気温や送電線導体温度でも記録しているのでしょうか。
しかしそうだとすると、現在使用してない装置の温度記録計だけ交換と言うのも不自然です。
 後は、思想統一無しの、「スペースがあれば何でも突っ込んでやれ」。詰め込み式の盤設計なのでしょうか。まあ隣接盤でした位の言い訳は出るかも知れませんが。

2.所内電源切替え用補助リレーは外部衝撃により、瞬間的にでも誤動作しますか?
 ミニリレーならあるいは衝撃で誤動作の可能性もありますが、送電線制御用や所内電源切替え用などの重要リレーはそれなりのしっかりした構造をしたものがマウントされます。
接点動作ストロークも大きいし、コイルも大きいし、スプリングも強いでしょう。衝撃で接点が make する可能性は絶対ありません。接点が離れてそれがb接リレーで増幅されて不要動作に至ったということは無い事は無いかもしれませんが、その程度の品位のものを送電線制御用や所内電源切替え用に使っていたとすれば、ここでも原発の設計はどうなっているんだという非難は避けられないでしょう。
 またもや、「設備の重要度に応じて個別に仕様を定めていて、当該所内電源切替え用補助リレーも、当社からの設備仕様に基づき、設計・製作された」ですか。

 リレーは何ガル位の衝撃で誤動作したのでしょうか。これは嫌味じゃなく原発の耐震強度の目安にする必要が有るから訊きます。
衝撃で補助リレーが誤動作した可能性に言及し、打振試験でも再現できたと主張するんだから、今問題の地震強度では問題がない事を証明する必要が有ります。
 あるいは、「原発はこの程度の耐震強度はあります」と胸を張られたら、衝撃で補助リレーが誤動作した、打振試験で再現できたと言うのは勘違いの可能性があります。整合をとる必要があるでしょう。
 もしかして「耐震強度は設備建造物の耐力の問題だ。今の話は制御リレーの誤動作の話じゃないか」という反論が出るかもしれませんが、その場合「地震で、設備建造物に別状が無くても、制御回路はどのような挙動を示すか責任持てない」と言っている事になるのはご理解頂けるでしょう。

 以上はリレー一般論です。さらに進めると所内切替制御の主幹リレーはキープリレーの筈です。
ますます衝撃による誤動作の可能性は少なくなります。
 キープリレーは、セットコイルとリセットコイルが有り、これらが励磁されてない間は現状を保ちます。
従って、入力に繋がっているリレーの接点が衝撃で不要動作をして、さらにその途中で元に戻っても、キープリレー自体の動作が中途半端に動作するという事はありません。入力接点がほんのわずか不要動作して戻っても現状維持か、十分に長い時間なら反対側に倒れるかだけです。
所内切替で言えば、発電機側か起変側の遮断器のどちらかは閉指令が出ています。
 即ち、所内切替にキープリレーが使われていれば、「誤動作した補助リレーの動作時間が極めて瞬間的であったため、常用系電源の所内側しゃ断器のみが「切」状態になり、外部電源側のしゃ断器は「入」状態にならず、発電機からの受電が外部電源からの受電に切り替わらなかった可能性」は全くありません。
 打振試験は、当該補助リレーだけでなく、所内切替用キープリレーも合わせて試験しましたか?
 「作業員が触ったのが、キープリレーだったんだ」と言うのも、説明にはなりません。普通所内切替用キープリレーは電気室の遮断器盤内にある可能性が高く温度計などとは無縁ですし、衝撃でどちらかに倒れたとしても、やはり発電機側か起変側の遮断器のどちらかは閉指令が出ています。
 この件の虚述の嫌疑は真っ黒です。
 もし、所内切替主幹リレーがキープリレーであった場合、故意の虚述であれ思い込みであれ、「可能性がありました」と弱気で言うにしろ、この推定原因を導いた人達にこのような仕事をする資格はありません。
 これは電子回路のフリップフロップでも同じ理屈になります。ぜひとも回路図を見たいものです。

3.不使用中の系統安定化装置の所内電源切替え用補助リレーから不要動作出力が出ましたか?
 機能をどのように停止するかと言う問題ですが、プレス文では「今後、誤って接触しても信号が発信しないように、所内電源切替え用補助リレーを含む電気回路は今回の停止期間中に撤去する」とあり、他号機についても「系統安定化装置の所内電源切替え用補助リレーを含む電気回路を至近のプラント停止時に撤去することとし、撤去するまでの間は、原則として補助リレーに接触する可能性のある作業を行わないことといたします。」とあります。
 通常その様な設備では機能 activate スイッチがあって機能を停止する場合、入力・出力回路ともスプリングリレーなどで外部とはアイソレートし、全く無関係に出来るようにするはずですが、そうではなかったようです。
 入力の系統周波数、系統電圧はアイソレートされていたのではないかと思量されますし、出口側もまさか発電機トリップの転送回路は殺してあったと思われますが、所内切替だけケーブルは繋がっていたというのは、回路の不使用状況の管理がまちまち―出来ていない―だったと言う事です。

4.系統安定化装置の所内切替えは並列切替は出来ないのですか?
 系統安定化装置とは「送電系統に事故(周波数変動、系統電圧変動を含めた系統動揺)が発生すると、発電側と負荷側に差が生じることから、発電機を含めて系統が不安定となるため、発電機を送電系統から切り離す(発電機をトリップさせる)ことにより余剰発電量をカットし、系統を安定させるための装置。」とあります。
 この動作は瞬時―数サイクルの話をしています―を争うのでなければ、何が何でも停電切替だと言う訳でも有りませんよね。原発関連の系統安定化装置です。停電切替しか出来ないと言うはずは有りません。
また並列切替可否の重要ファクターである位相差、アングルは潮流により発生しますが、系統が幾つかあって、発電機と起動変圧器の系統が異なっていたとしても、消費端から遠く離れた、大電源エリヤーの中でさほど大きなアングル差が生じたとは考えにくいものです。
 実際に何度も解並列の事績がありますが、並列切替しようとするとき何時もアングル調整に苦労していますか?
誤動作であれ、所内切替指令が出た場合、並列切替モードになったとしても構わないはずです。
 2号機の送電系統と起動変圧器系統が異なっていたとしても。停電切替になるほどアングルがずれていなければ、並列切替が開始された可能性もあります。
 そうすると、まず起動変圧器側遮断器が入ってから、所内側遮断器が切れるシーケンスになるので、キープリレーでない場合でも、途中で所内切替指令が切れても、停電にはなりません。
 勿論並列運転が続きますから、途中でアングルが大きくずれれば、遮断器保護が働きますが、それでも並列切替が成立出来た状況から次第に離れていくのなら、切れるのは一方だけです。
 要するに違う電源系統だとしても、さ程位相差、アングルが大きくずれていることが考え難い現場で、最初から停電切替が始まったのは何故でしょうと言う疑問です。停電切替専用指令の補助リレーが誤動作したというんでしょうか。
 実際にこのリレーが誤動作したんだという、リレーの特定は出来ているんでしょうね。「見ていた訳じゃないから」と思考停止ではなくて、これが短時間でもb接開の不要動作したら、停電切替になったことも含めて全てうまく辻褄が合うという、特定が。

5.冷却ファン停止で即励磁制御装置トリップ回路をそのまま使っていましたか?
 確かに世の中には、冷却ファン停止で即本体トリップという過剰保護のサイリスター装置はあります。大型サイリスターも安くは無いから止むを得ない選択でしょう。
 しかし冷却ファンが停止しても直ちにサイリスターの温度が限界まで上がる訳ではありません。タイマーで時間を稼ぐなり、警報で注意を喚起するなり、やり方はあるはずです。
 特に原発でこの様な騒ぎになる事とその損失を考えると、サイリスタースタックの数個―数十個が一気にお釈迦になることは無い、最初に弱いものから切れて行く―など問題では無いのではないですか?もう少し考え方はあったはずです。
 勿論後付理屈ですが、大した電力では無いんだからバッテリーの直流で回しても、あるいは直流バックアップがあっても良かったのでは無いでしょうか。
 ちょっと現場に行ってサイリスタスタック盤と界磁制御盤の上を確認してみてください。T社の盤の上部の異物侵入防止はちゃんと出来ていますか?パンチングメタルだけで導電性異物が入ったらひとたまりも無いという構造では有りませんね?
4号機の日立のフード付きと比べてみてください。昔は全然違っていましたから

6.所内電源喪失は直接原子炉スクラムでは無いですか?
 所内電源喪失では運転に必要な交流補機は取りあえず全て停止します。原子炉が運転継続できる訳がないから、直接原子炉スクラムに行くはずです。
 なぜ小さなファンと「発電機界磁しゃ断器トリップ警報」を経由させて、「発電機の保護装置が作動して停止したため、タービンならびに原子炉が自動停止いたしました。」と言うストーリーになるのでしょう。
 事実、関連 blog の書込みでも「界磁遮断器のトリップの原因が何か、が問題です。通常ではあまり故障の起きない部分です。界磁電源が喪失すれば発電機の運転は不可能なので発電機停止は良し、です。発電機という負荷を失ったタービンが停止するのも良し、原子炉の自動停止もよろしい。問題はここからで、」とあって、見事に話を原子炉から遠く離れた辺境の地に持って行けました。

7.相変わらず、「原発では何か起こらないと、事は進まないのですか」を地で行ってますね。
 対策に「作業時に接触または衝撃を与える可能性があるものに対して、注意喚起の表示を実施いたします。また、リレー近傍での作業時は、接触防止措置を施すか、安全処置を行うかを関係者間で協議することといたします。」「制御盤内作業、操作を行うときはリレーに接触または衝撃を与えないように十分に注意することを運転員および作業員へ周知することといたします。」と言う、何度も何度も繰り返される「注意喚起」「運転員および作業員へ周知」が出てきます。
 狭隘な盤内作業は今に始まった事じゃありません。盤内作業はヘルメット不着用ですか?電工工具ベルトは外していますか?作業範囲の表示と隣接運転範囲の養生はしていましたか?盤内計装電源の入り切りはチェックされていましたか?これの作業開始時には東電社員はそれら全てを確認して、開始指示を出しましたか?
 
8.この程度の調査に20日近くも掛かりますか?
 トリップ時に吐き出されるシーケンスイベント記録を見れば、所内遮断器の開放または低電圧はプリントアウトされていますよね。また界磁遮断器開放も出力されています。
その順序や時刻を見れば(高速低電圧リレーでなくても、この事故の場合「界磁遮断器開放」よりも早いでしょう)、6/17 の第一報で、「発電機界磁しゃ断器トリップ警報」から始まったと読めるような解釈はどうして出てきたのか、外野としては斜に構えたくなるのですが、上の6項が既に念頭にあったとすれば表彰ものです。
 それは兎も角、7/6 の報告の内容にたどり着くのに20日近くかかったのは何故でしょう。
勿論複雑な事象で、更に破断部溶損部の顕微鏡写真が要るとか、構成部品のクリープ試験が要るなど、結論までに時間を要するものがある場合があるのは判ります。
しかし、今回のは打振試験だけです。仮回路を作っても1日でしょう。
 即ち最初、所内遮断器が開放した原因が掴めなくても、その可能性に繋がる盤内作業があった事を掴むのに1時間、次の日に打振試験をしようと言うことになり、試験装置を作って、「週末はゆっくりしようや」となっても21日には、凡そのところは判明します。
 20日近くも鳩首会談があったとすれば、それは何のためか、興味を持たざるを得ないところです。

PS.
 今般、何のことはない、東北大震災の事故関連で、東電社長自らが当時自家発は30分間起動してなかったことを、国会で認めてしまいました。

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