瞬時値によるボイラー効率計算(副題:だから言ったじゃないの)
[副題に関して]
毎回気候の挨拶のようになってきたが、柏崎刈羽7号が75%まで出力が上がってきて同慶の至りである。
しかしその中でも不適合は発生し、今度は当blogで指摘しておいた項目が正しいと証明する事象が起きている。'09年5月25日、主排気塔から僅かな (測定指針に定める測定下限濃度に対し1/3以下の) ヨウ素が検出されたというものだ。
調査結果、給水ポンプシール水戻り配管エアベントから復水回収タンク室への拡散らしい。
低出力運転時は給水ポンプ内圧が高く、内部水がシール戻り部に出やすくなったためと言うことであり、対策としてシール水圧を高め、ポンプ内部水がシール水戻り配管に混入する量を低減した。今回の事象は機器の故障によるものではないとの事である。
これに対し当blogでは、'07年4月25日の6号機の給水ポンプシール水戻り配管ピンホールのトラブルに対し、「シール水の温度が高すぎはしませんか?給水ポンプ軸シール水量の管理方法をチェックした方がいいですよ」と言ってきた(東京電力・原子力運営管理部に緊急提言'09年4月14日上梓)。図示もして、更に支援警報の女の子などは「シール水流量を増やしてください」とまで指摘しているのである♪(blogのツールを原発へ'09年4月24日上梓)。やはり絞り過ぎのきらいがあるようで、温度管理も出来ていないようだ。
だって温度管理が出来ていれば、「低出力運転時は給水ポンプ内圧が高く、内部水がシール戻り部に出やすく」なれば、温度も上がり傾向になり、シール水圧を上げる筈だから、自動的にヨウ素の混入も抑制される事になる。
そう考えると原発でのここの温度管理は、軸シール部フラッシング対策に加えヨウ素放出抑制の意味でも重要なポイントであったことが判る。多分ちょっとでも進んでいる国内通常設備では、ここの温度を自動調節にしてあるところもあるはずだから、ラフなあちら製の原発設計思想を、そのまま後生大事にラフなまま運用している可能性もある。それとも自動調節はあったが、設定値をやたらあげ過ぎて、オフセットも大きく、宝の持ち腐れだったか?
これに対し、blogの記述を読んで素直に運用を見直して是正していれば今回の不適合も不発だったはずで、折角注意してあげているのに勿体無い。
確かに「機器の故障によるものではない」が、部外者でも提起できる(ヨウ素の存在は知らなかったから、シール部軸端のフラッシングだけ考慮したので温度は高めに表現しているが、内部からのヨウ素の混入があるのならその段階で原子力プロフェッショナルとしての、更に一歩踏み込んだ検討・配慮が出来たはずだ。「シール水戻り温度は何度にするか→内部水の混入比率を幾つにするか→するとヨウ素混入は幾らになる、許容範囲 <測定指針に定める測定下限濃度以下であっても、あえて不適合として公表しなければならない範囲かどうか> か?」即ち問題提起である)、あるいはプログラムされた女の子でも指摘できる、機械の適切な運用管理方法に気付かなかったということになる。
東電関係者の方、当blogに来訪されたら、ぜひ東電の人に教えてあげてください。他にも一杯参考になるものがあり不適合減少に繋がる可能性があるから。
また、シール水の圧を上げてシール水戻り温度はどうなったか知りたかった。
[本文]
さて、ボイラー蒸気量積算値の分解能が 0.1ton/1pulse と低く、1時間に1つパルスが入ると入らないのとでは、積算値による効率計算が大きく振ると言うことを「ボイラー効率あれこれ」「省エネの条件整備」等に見た。
これは、省エネマインド喚起の上でマイナスだから是非とも1桁上げたいところだが、薬品注入・ブローコントロールなどもその出力によっているため、変更するには関係者のちょっとした決意が必要である。「そこまでしてボイラー効率を管理してどうするんだ」というリタイヤ前の面倒くさがり屋の横槍も有るかも知れない。
一方瞬時値の方は、アナログで連続的に変化する。例えばトレンドグラフの動きは、もっと細かく連続して動いているだろう。表示桁数は同じく 0.1ton/hだとしても、桁数制限は監視装置内で掛けてあるから、この桁数を上げてやれば細かい数値で扱える。
と言うことで、監視装置メーカーさんに頼んで各部蒸気流量は下2桁、各部圧力は下3桁に変更してもらった。項目ごとに設定してある表示精度を変えるだけだから直ぐ出来る。
これにより、監視画面表示桁数は変わらないが、関連ファイルに書き込まれる桁数が全て細かくなった。
「さあこれで、瞬時値を使えばもっと細かく効率が見えるだ筈だ。どうすれば良いか」と始めた。
今のところ些か竜頭蛇尾のきらいがないでもないが、途中経過としてみてもらおう。流れは次のようになる。
1.効率計算に必要な瞬時値を対比してみたが、運転状態がかなり変化していてそのまま入出力を割り算しても大きくばらつく。
従って、有る程度の期間平均をとる必要があるようだが、その期間にも変化がないことを確認する必要が有る。
効率が例えば負荷率により変化するとすれば、これが大きく変化していれば、何処の負荷率の時の効率か判らない。
また、瞬時値採取の隙間のデータは反映されないから、平均算定に供する瞬時値のサンプリングも極めて細かくする必要が有る。
2.以上を見るために、排ガスロスを含めて入熱がどのように使われるか対比して、その時間的遅れを把握してみた。
3.一定期間安定運転が続いた場合の平均データで効率を計算した。上記は確認しただけ。「竜頭蛇尾のきらい」の所以である。
1.効率計算に必要な瞬時値を対比してみた。下は一例だが運転状態がかなり変化していてそのまま入出力を割り算しても大きくばらつく。
当所のシステム上に残る(1日でペーパーアウトしてしまうが)最短データは5秒間隔である。これをベースに例えば蒸気量で見て見ると、下の通り変化している。
瞬時値で計算すると言ったって、代表としてどのポイントを使うんだ?と言う悩みも出てくる。
2.そこで燃料ガスによる瞬瞬の入熱がどのように使われるか対比して見て、その時間的遅れも把握しようとした。
熱の出力としては、次の項目を考慮した。
① 蒸気による搬出熱量
② 給水温度補正量
③ 蒸気圧押上げ熱または蒸気圧低下の放出熱量
④ 排ガス持ち出し損失熱量
これらを全て合計して、ガスによる入熱と比較する。
各項目は具体的には次の式による。ダウンロード sb1effinst.xls (1005.5K)(内部セル書換にはダウンロード Steam97.dll (116.0K)、ダウンロード ltbrfunc.dll (416.5K)必要)のセルを覗いて見てください。
また計算の時間を明確にするためdt=5secとした。
入力は、
ガス熱量[kcal/dt]=ガス流量[Nm3/h]×5sec/3600sec×ガス低位発熱量[kcal/Nm3]である。
出力は、
① 蒸気熱量[kcal/dt]=蒸気流量[ton/h]×5sec/3600sec×1000[kg/ton]×(乾き蒸気エンタルピー[kcal/kg]-60<給水温度固定>)
実給水温度から加熱量を計算しても良いが、簡易計算の給水温度の値を使用し、その差を以下の式で補正することにする。給水時間遅れの要素を後々必要な場合計算に加味出来る様にするため別立てにしたものだが、夏場は兎も角この辺では定量的には影響無かった。
② 給水加熱補正量[kcal/dt]=蒸気流量[ton/h]×5sec/3600sec×1000[kg/ton]×(60-給水温度[℃])
厳密にはブロー量を加えることになるのだが、少ないとして端折った。今回のデータでは60℃に対し殆ど変化がないので意味はないが、今後夏場の80℃近くの時に計算する場合も考慮して項目を残した。
圧力変動吸収分は、
③ 飽和熱当量増分[kcal/dt]=貯水量10.9[m3]×1000[kg/m3]×飽和水エンタルピー[kcal/kg]の変動
ボイラー圧の上昇下降による熱量の出し入れを加味する。当該ボイラーの標準水位貯水量は10.9[m3]であり、比重は1とした、蒸気分[kg]は少ないとして端折った。
まずSTM_sTp(圧力)関数により飽和温度を求め、これからSTM_sHtx(飽和温度,湿り度=1)関数により飽和水エンタルピーを求めた。蒸気関数の詳細は「Excel 関数 DLL」ページにある。
やってみれば判るが、そのままでは熱量が±に大きく振る。まずこの様な(5秒毎の区切りの)計算には圧力分解能が下3桁でも不足で、やむを得ず平均移動して中間値を得た。
さらに、飽和水エンタルピーの出し入れもその瞬間瞬間に対応するものではなく、熱慣性や蒸発時間などでもう少し長期的な振る舞いをしているようで、前後7区分の平均移動とした。
この辺は熱慣性や飽和を挿んだ蒸発⇔温水間遷移のメカニズムにより今後数値の取り扱いの工夫が必要だろう。
損失は、
④ 排ガス損失量[kcal/dt]=ガス流量[Nm3/h]×排ガス量比率[Nm3/Nm3]×5sec/3600sec
×(排ガス温度[℃]-室温[℃])×排ガス比熱[kcal/]
排ガス流量は一定でも良いが、13.7[Nm3/Nm3]~15.5[Nm3/Nm3]まで変化するので、排ガス02から実態の排ガス量を計算した。
詳細はsb1effinst.xlsの「燃焼排ガス量」シートにあるが、13Aガス組成のメタン・エタン・プロパン・ブタン毎に燃焼性生物を求め、また排ガス比熱も計算した。
室温は25℃、排ガス比熱は0.33[kcal/Nm3]一定とする。
排ガス損失は入熱の5%程度に止まった。この程度の出力時はそんなものかもしれないし、温度計の誤差、さらには温度上昇中であり安定すればもっと高くなるだろうと言うことも考慮する必要が有る。
また他の伝熱・放射損失は一定かつ誤差範囲として計算しない。
下図は上図の初期20分弱の間のON・OFF運転に対して、この様な計算を行った結果である。sb1effinst.xls の「瞬時データ」シート参照。
ガス量が殆ど99[Nm3]の低限リミットにかかり、入熱(ピンク)は1,335[kcal/dt]一定である。一方蒸気(藍)は1[ton/h]~1.9[ton/h]を変動しており、1,500[kcal/dt]を越える時も有る。
入熱(ピンク)と蒸気(藍)の変動はボイラー圧(赤)の変化として吸収され、0.88[Mpa]で自動待機に入るが、その飽和水エンタルピーの変動は黄色であり、デコボコはあるものの殆ど蒸気変動を相殺していることがわかる。
排ガス損失(緑)もこの辺では70[kcal/dt]で比率は大きくは無い。
これらの熱量を全て加算すると合計熱量(青)となり、これとガス入熱(ピンク)との差が伝熱・放射損失などであり微量のはずである。
この誤差を2乗して累計したものが、最終的にグラフに入るようにスケーリングしてあるので数値に意味はないが、誤差累計(細赤)である。これは後で使う。
入熱(ピンク)と合計熱量(青)の差はしかし無視できるほど小さくは無い。入熱(ピンク)と蒸気(藍)の差は飽和水エンタルピーの変動で相殺しているといったが、まずこれがタイミング的にずれているように見える。
これを合わせてみようと言う欲求が起こるのは当然であり、そこで圧力をベースにして全ての項目をシフトして対比できるようにしたのがsb1effinst.xls の「データシフト」シートである。
これを利用して出来るだけ誤差の少ない組み合わせを指向すると下図のようになり、累計誤差も半減した。点火中のピンクと青はかなり近づいている。
入熱(ピンク)一定下で、蒸気(藍)と飽和水エンタルピー(黄)の位相も一致したが、基本的な考え方に問題が内在しているようだ。
例えば非点火時に蒸発する場合(dt19辺り)は飽和水エンタルピーはもっとゆっくり低下した方が誤差は少なくなるが、点火中の蒸気増大時(dt226辺り)は飽和水エンタルピーはもっと早く低下した方が誤差は少なくなる。
ちなみに飽和水エンタルピー(黄)をさらに2倍(-8)ほど遅らせれば、下のように非点火時の誤差はさらに小さくなる(誤差の累積も少ない)が、技術的解明が出来てない現時点では単なるお遊びの類だろう。
この計算方法について、熱慣性や飽和を挿んだ蒸発⇔温水間遷移のメカニズムを考慮したより正確な手法が編み出せれば、瞬時値による効率計算もかなり有意になってくるだろう。
3.今までの考察はひとまず置いて、平板的に一定期間安定運転が続いた場合の平均データで効率を計算した。
一定期間は15分(180dt)とした。安定運転とはその期間蒸気量が平均値に対して20%以上変化しないことを条件とした。供するデータは、完全停止を除いた5日間分で、29000dt、40時間分である。
このデータ群を180dtの間蒸気量が平均値に対して20%以上変化しないことをチェックして行って、パスすれば一つの区切りとして蒸気量、ガス量、給水温度などの平均値により効率を計算する。
上の考察で飽和水エンタルピー変動の影響が大きい事が判っており、区切りの始端と終端の圧力同一条件を加味すべきだがそうするとデータ組数が殆ど無くなる。
やむを得ず圧力条件を付けずにカウントして40組である。即ち40時間の内15分の間蒸気変動が±20%内に収まっているのは40件と言うことである。
結果は下図であるが、筆者から見れば分解能の悪い積算パルスで計算した効率の相関図より余程スマートに見える。
低いところの効率は高めに感じるが、個別計算では排ガスロスは排ガス温度が低い時は入熱の5%程度と言う計算も出来たし、当所ボイラーは「」でも触れたように徹底的に保温しているので、一定運転時の効率はこんなものかもしれない。
5[ton/h]付近の高負荷では、ガス量440[Nm3/h]で排ガス温度が175[℃]以上になるから、排ガスロスは、
440[Nm3/h]×(175[℃]-30[℃])×14[Nm3/Nm3]×0.33[kcal/Nm3℃]≒295,000[kcal/h]となり、ガス入熱
440[Nm3/h]×9706[kcal/Nm3]≒4271,000[kcal/h]の7%となり、かなり効率引下げに働くから。
従って暦日などの実運用の低効率は、発停、変動などによる効率低下要素が働いているものであろう。また缶水ブローによるロスもあるが、ここでは考慮していない。
データが多く扱えるようになれば、圧力変動無しのデータに限ってみよう。
①~②項と③項の2つのアプローチについてはその手法が見えたと言う程度に留め、今後じっくり取り組んでみたい。
「Syo-ene」カテゴリの記事
- 障害はあれば有るほど燃える(2008.09.29)
- ターボ運転領域に於ける冷却塔特性(2008.02.13)
- 5D相関図。付いて来れるかな♪(2009.10.23)
- ターボ冷凍機(定速度ベーンコントロール型)の特性(2008.02.13)
- 2020年までの温室効果ガス排出削減目標、05年比15%減!(2009.07.01)


コメント