ターボCOPと冷却水流量
今まで「冷却水半減で省エネ?」から始まり「You've told me that a thousand times already.」「立体重相関図の最終機能」等で「吸収式の冷却水流量はCOP維持に関して重要ですよ。高い方がいいですよ」と言う言い方をしてきたが、ターボについての物言いではないので念のため。
当所のターボは(固定速度ベーンコントロール型・以下本 blog で同様)定格近傍一定運転で、冷却水流量も殆ど一定で運転しているため、この変動の影響は掴み難いが、じゃあターボの冷却水流量とCOPの関係はどうなのかを見て見る。
その前に、原発に関して前回筆を置いて以降2,3の動きが有った事と、言い足らないことが有ったので稿を改めるほどではないが、先にちょっと触れたい。すみません。
関係者の血のにじむ様な努力の甲斐あって柏崎刈羽7号機が運転再開の運びとなり、まずはおめでとうございます。
しかし慎重なスタートアップの最中にも色々な出来事が起こるようだが、どうしても通常設備運用との不可思議な乖離を感じざるを得ない。
最初は圧力抑制プールの水位上昇警報で、水面が波立って水位の上昇傾向に気付かなくて水位下げ操作が遅れ発報に至ったもので、人為ミスだそうである。
人為ミスなら人為ミスでしょうがないが、それをカバーする態勢は出来ていないんだろうか。ちょっと可哀想な気がする。オペレーターが一人ポツネンと監視装置に対峙している訳じゃないよね。
写真を見ると制御室には、多くの人が居るようだが、その時あの人たちは何をやっていたのだろう。廻りの同僚・グループ長・当直長などが、「圧力抑制プールの水面は波立つことがあるから、四方のレベル計の動きを見て、同じ様に変るようなら注意しろよ」とか言わないんだろうか。
あるいは「圧力抑制室の水位は安定してるね?」と訊かないんだろうか。訊くだけでなく自分でちょっと立って行って後から覘き見ないんだろうか。
「カバーする態勢」などと大げさに言わなくても、チームで仕事すると言うことはそう言う事だよね。
「各自それぞれ緊張して張り付いているのにそれ所じゃない」と言ったって、より広い範囲を統括して見ている人は居るんでしょう?
一人の人為ミスだったと言うなら、システム的に「防衛産業に緊急提言・営業コンサル・コンセプトは迅速・正確」のミサイル発射の誤報と同じ弱点があることになる。
緊急時の人間一人の判断なんか、かなりアブナイよ。そんなものに依存することしか出来ない原子力なら大変だよ。誤報はまだ誰かが修正できるが、こっちは操作直結だからね。
また、「言われなくても当然2~3人のフォローはあったさ、それらを含めて人為ミスは免れなかったんだ」と言うのなら、最早何をかいわんやで、原子力をマニュピュレートするに足る陣容か否かが問われる。
大体圧力抑制プールの波立ちはポンチ絵にも表現されている程でRCICS運転時の常態だとすると、平均移動や四隅の水位平均や慣性の大きなレベル計の採用など、正確に把握できるようにする当然の設備対応が出来てないで放置されていたことは、一方で2アウトオブ3指向等で「ゴージャス」に手厚くフォローされている計装設備万全完備の筈の現場としては如何にも片手落ちだ。
事後の再発防止対策でも、これを改良しようと言うモチベーションなど湧いてこないんだろうか。
お判りだろうが、当プログの支援警報システムはヒヤリハットを含むトラブル後の再発防止インセンティブもあるが、「可能な限り事前に対策しておこう」と言うモチベーションで追加されるウエイトも小さくない。これがプレコーションで、攻撃的運転管理指向。ロジック追加だけなら金も掛からない。
「圧力制御室の水位変動の傾向をより詳細に把握し、水面の浪打を考慮しても水位が通常の範囲を超えないように、速やかに圧力制御室の水を移送できる準備・操作を行うことといたします。」これって「今までちゃんとやれてたのに、何だお前は╬。これからは充分気を付けろ。他の皆もだぞ」と、オペレーターに押し付けるだけで何もしないって事?
また制御室の陣容に触れたが、極めて重要な時期だから、本社の偉いさんや保安院など役所関係者も詰めていたかも知れないが(大昔、筆者のいた現場で、監視盤とオペ机の間をうろちょろする見慣れない人が居るので、剛の者の先輩がマナー知らずな奴めと「おじさん、そんなところウロチョロしたら危ないよ」とクレームしたら、現場視察に来ていた本社の役員だったそうな۵♪)、そう言うシチュエーションだったら、当直長も部下掌握・設備把握の腕の見せ所じゃないんだろうか。
「厳粛な場面だから、そんなスタンドプレーに見られかねない言動をやれる状況じゃ無い」と言うのか「目立ちたがりだと、部下の総スカンを食ったら今後に差し支える」とじっとしているのか、同僚も「ライバルの失敗は蜜の味」と言うのか、以前の不具合の時も労災の時も感じたが、兎に角原発は相互コミニュケーションの気配が感じられない。本省の役所と同じ雰囲気。「グループの力を出し合って相乗効果で事に当たろう」なんてとても期待薄。「その時あの人たちは何をやっているのだろう」と言う疑問の所以である。
事故の未然防止だ。上の話題は単なるジョークの類で、まさか無いとは思っているが、他人がどうこうの問題じゃなく、その能力を持った、あるいはそのポストに有る人が、必要な指摘・指揮を執るのは当然の責務なんだよ。
2つ目主蒸気止め弁のラッチ圧力については、弁ステムのカップリングクリアランスも見ながら調整するんだろうが、かなり繊細な、本来はメーカーの熟練工によるものの筈だが、「今回の定期検査において、当該主蒸気止め弁の弁体の作動範囲の調整をした際、施工要領書の記載に不十分な点があったことから、弁体が弁箱に押し付けられ、弁棒に引張力が生じたため、・・・」等という報告記述を見ると、殆ど素人に毛が生えた程度の技工達が施工要領書と首っ引きで格闘しているシーンが目に浮かぶ。
今回の一連の復旧工事にメーカーの十全の協力が得られなかったのか、あるいは重役天下り先「東電協力企業」が仕事抱え込みで、メーカーには「作業要領書だけ作ってくれ、後は俺達でやれるから」と言ったものの、重量物相手にかつ極めて繊細な精度が要求される作業ニーズを理解できず、それ程高度の技能者を集められなくてやっつけ仕事を繰り広げ、ボロがそこいら中で噴出したものか知らないが、今までのトラブル原因にも「施工要領書の記載に不十分な点が、」と言うclichésが多く見られることから判断すると、後者もあながちまるっきり間違いではないようだ。
だとすると、これらは当然起こるべきして起こったものだと言うことが出来る。メーカー(または熟練工)の作成した施工要領書だけ見て、素人(熟練未満・素人以上)に充分な作業が出来るわけがないからである。それが可能なら技術の継承などで苦労するわけがないんだよ。
「俺達のノーハウを持って行かれる」と言う心理的抵抗も記述内容に影響するだろうし、要領書で作業する技工がどの程度の技量か不明だからある程度のレベルを想定するだろうし、「ここの部分のコツは不立文字!身をもって覚えるしかないんだよ╬」と言うのも多いはず。
下のゼロ調だって「ロックペンをしなさいとまで書く必要があるの?そんな奴達にこの仕事やらせるの?」と言われる可能性だって有る。
また「当該系統が通常操作で停止できない事象が起こった」とあるが、主蒸気止め弁が閉まらなくても加減弁は閉まってタービンそのものは停止したはずですよね。であれば単なる「主蒸気止め弁閉動作不良」であり、でなければ加減弁作動不良・シート漏れなどもっと大きな問題になる。この辺の表現もちょっとあやふや。
給水ポンプ調整弁開度計のゼロ点ずれなんかはロックペンキなど緩み防止がしてあれば絶対ずれない。シビア―な原発でそんな基本も出来てないなどということは、本当に不思議でしょうがない。
従って、別な思いも頭をかすめる。
一つは、サボタージュ活動の存在である。今回のゼロ点ずれ、過去のジーゼル燃料の漏れ、電源パッケージの飛び出し等は、技術的には「サボタージュがあった」と言われた方が余程スッキリ納得できる。反原発グループか某国工作員か?極秘裏に捜索中?
もう一つは、「木は森に隠せ」の類である。殆ど重篤でない事故報告書を時々連発しておくことで、本物のクリチカルなトラブルが起こった場合に同等視させて危機感を希釈してしまおうというやつである。筆者の斜視かもしれないが、報告書の画一的対策・ルンルントーンはこちらの可能性を示唆している。
・・・これで片付けようとしたが、よく考えると弁の振動は差圧が大きい時が大きい。ポンプ吐出圧と炉内圧の差圧も子弁を使っている時の方が大きいはずだ。
開度発信器が同様システムだと子弁のゼロ調の方が緩む可能性が高いんじゃないか。これに触れて無いと言う事は、「子弁も問題ないか見る必要が有る」と言う水平展開が全く出来ないか、子弁の方は緩み対策がしてあったが「『親弁のが緩んでいた』だけで済まそう۵」。
即ち、親弁のゼロ調緩み対策忘れと言うことになり、この辺が微妙にぼかされている。
運用で言い足らなかったことというのは、「アナログマインドの効用」である。
原発の不具合撲滅に、プレコーション思想に裏打ちされた支援警報を推奨し、かつプレコーション思想にはアナログマインドが重要だと言ったが、別の観点からも見て見る。
労災対策で「発声行動申告による前頭葉の活性化で労災撲滅」とも言ったが、オペレーターの前頭葉の活性化にはアナログマインドの喚起が一番である。
要するに、このプロセスバリューは1分後10分後1時間後にはどうなるかを、常に予想する癖を付ける。最初は上がるか下がるかだけでも良い。そして結果が違っていれば、何故間違ったかを詰めていくと、「この物性はこんな特徴があるんだな」とか「この制御系はこんな特性になるんだな」とか「これだけキャパシティがあると時定数はこんなになるんだな」とかプロセス特性が判って来る。いざと言う時の不具合回避操作に有効に演繹または帰納できる。
警報を受身で待つのではなく、思考回路が活性化し、能動的に、攻撃的にプロセスに対峙できる。
支援警報ロジックの追加の必要性に気付けば、不具合への移行初期のトラブルグレーゾーンにあるうちに網を掛けて待っていられる。監視はシステムに任せっ放しで一時忘れているとしても、ロジックをセットしたことはメンタリティは能動的に待つと言うことである。
これに対し「デジタル指向」で、おしきせの警報発報後の対応動作だけ熟練しても事故時の度胸は付くかもしれないが(これも昔話だが、プラントが全停して、警報がピカピカフリッカーしだしたら、「何かしようとして慌てて2次災害を起こさない。とに角何もせずタバコを一本吸うのがかっこいいんだ」と言う言辞が膾炙したことがある)、そこは些か常態を逸脱したゾーンだから通常の監視操作に活かせる部分は少なく、不具合回避は不如意で、何時まで経っても警報が発生する事態は止まないということになる。
ましてや一度立ち上がったら何時までもフラット運転が続き、通常運転中はあまり発報がないとすれば、プロセス応動特性を身をもって勉学するチャンスは限られるから、ごくたまのスタートアップ操作でボロボロと出てきてしまう。今の実態はこのせいもあるんではなかろうか。
「シミュレーターがあって定期的に訓練している」と言う反論もありうるが、シミュレーターなるものによる研修の大半はスイッチの入り切り、機器の発停順序のシーケンシァル教育、即ちそれこそ「デジタル」であって、アナログPV値に対する操作のフィードバックがまるで実機であるかの様に感得出来るというのは少ないのではないだろうか。
ここで言っているのは、PV値がさもそれらしく(制御棒を抜くに従って徐々に温度が上がってくる程度の)動けば良いというもんじゃない。実機と同様の感度幅・時定数で変わってくれなければ、返ってオペレーターに変なインプリントをしてしまう。
制御系のPIDは発電ユニットにより異なるから、プロセス特性も異なることを勘案すれば、シミュレーターはユニットのスタートアップルーティーンを勉強するための導入教育用には有効だが、プロセス応動特性の感得は実機でのOJTに勝るものは無い。
全てのPIDのテーブルがあって、一括差し替え可能で、福島第一1号・柏崎刈羽7号コースと言うようなメニューが取り揃えられていれば使えるだろうが。
またスタートアップルーティーン業務だけじゃなく事故対応の訓練も出来ると言うかも知れないが、基本想定事故は兎も角、今日本の原発で起こっているような不具合事故を訓練項目としてシミュレーターにセッティングするのは、並大抵じゃないだろう。
さてお待たせしました。本旨に入って、ターボのCOPに対する冷却水流量の影響に行こう。
冷却水量の変化幅が少ないので極めて計り難い。
更にスライムの影響がチューブ清掃以降の運転時間で効いてくる事が判っているので、その中で狭い冷却水量の変化幅によるCOPの変動を捉えようとすれば、自然2液化後のフラットな条件が不可欠であり、ある意味で2液化後の現時点に至って初めてターボの冷却水量の影響を云々する環境になったと言える。
メーカーさんが工場テストでやるならどんなことでも出来るだろうが、こちらは実営業機での許容変化範囲で調べるしかないんだから。
TRは325m3/h~345m3/h程度の範囲で振っている。6%の変動である。
これは冷却水本管の差圧およびストレーナー差圧により変化する。前者は冷却塔10セルの内幾つが開いているかにより冷却塔の差圧が変り、合計の冷却水量が幾らかにより、母管の圧損が変る。これらにより冷却水流量が影響されるからである。
説明変数の取り方は、ターボCOP= f (製造冷熱量・冷却水温度・冷却水流量)とする。説明変数3個の、当ブログで言うところの4D重相関図になる。
ツールとして、ここのところ何度も使用しているarcopcmp.exe(with glut32.dll) を使う。これは今まで2つの3D相関図対比用に特化したものとして使用していたが、4D重相関図も作れる。
データは ダウンロード tr_COP_ColWtrFlow.xls (246.5K) の 「TR」「DTR」シートにある。例によってワンクリック丸々コピーマクロも有る。
tr_COP_ColWtrFlow.xls の 「TR」シートを開いて、データ群の枠内を正確にコピー (または「丸々コピー」を押す) して、arcopcmp.exeの相関Ⅰシートの中央のテーブルを右クリックして「clipbrd_copy」を選択すると、データが呼び込まれる。
②③と押すと相関図が作成される。
出来た相関図は説明変数として冷却水流量が拾えず、2変数だけの式になっているから、相関Ⅰシートに戻ってトリム条件を変える。
時間変動の少ない落ち着いた部分のデータを採用するためトリムの変化率を全て10%とし、また極端に冷却水温度の低いのがある様だから下限を23℃にして、再度②を押すと1148件残るので③を押す。
今度は3個とも拾ってくれたようだ。曲面軸作成選択の一番下をチェックしてTR-CoolWtr_Flowで曲面軸を作成すると、350.17m3/h~324.00m3/hまで4つの相関曲面ができている。左方向が負荷率低方向、上下がCOP、奥行きが冷却水温度高側である。
冷却水流量が増えるとCOPが上がる。上と下の差は流量で約25m3/h、COPで0.2である。定性的には吸収式と同じ動きである。
データドットの大きさ。光線の当て方、色彩なども変えて判りやすくしてみて下さい。
続いてダブルバンドルであるが、340m3/h~385m3/hまで変化している。10%以上の変動である。
これには訳があり、温熱製造時に温水温度高で冷却水ポンプがバックアップ起動するとき、冷却水温度制御が効いていてバイパスとメインラインの両方の調整弁が開くと、ポンプ定格の380m3/hを大幅に超えて450m3/hにもなることがあるので、温水時期は流量を絞るため、冷専時の冷却水も絞られたままだったからである。
温熱製造時の冷却水温度制御とは、冷却水ポンプがバックアップしてもあまり温度を下げず、温水出口温度への影響を出来るだけ抑制するように、高温冷却水を冷却水入口部に戻し一定温度を維持するため、バイパスラインを設けているものである。
とりあえず、TRと同じ要領でやってみる。トリムの変化率を全て10%としたら、冷専のデータとして637件残ったので③を押す。
出来たのは下図である。冷却水流量との関連は採れたものの、影響は少ない。また影響が少ないことによるものだが冷却水流量とCOPが逆の方向になっている。
おかしいな、冷却水流量を上げた時の状況は下図の通りで、冷却水流量にあわせCOPは上がっているが、冷却水温度の影響がかなり大きく、それに隠れているようにもみえる。
データ採取の方法・期間・2液化時期との絡み(ターボとは温水製造期間分異なる)、温水が熱当量として隣に存在することの影響など、何らかの影響があるのかもしれないが、今のところ不明である。もう少しデータを蓄積、吟味してみる。
吸収式でもやったように外からデータを眺めているだけでは駄目で、ターボの内部理論・構造まで入っていく必要もありそうだ。
なお、tr_COP_ColWtrFlow.xls のシートと同様な様式・順序でデータを揃えられれば(小数点以下の数列は10倍100倍してください。相関曲面作成に失敗することがあります)、2変数(3D相関図)でも3変数(4D相関図)でも計算できるので、色んなデータ解析に利用してください。新しい世界が広がり、思いもよらなかったデータマイニングに成功するかも知れません。
一例として、後日気付いたが現在データ蓄積中の「スライム抑制による冷凍機効率の改善」に関し、2液化後の冷却水温度の吸収式COPに対する影響度合いが、緩和されているようにも見える。
下図は左方向が冷却水温度高方向、上下がCOP、奥行きが負荷率高側であるが、青の2液化後の方が、冷却水温度方向の傾きが緩やかである。即ち従来に比べ冷却水温度が高目でもCOPは高めに維持されているように見える。
まだ充分なデータ個数ではないから確度は高くないが、2液化は冷却塔の弱いプラントにも明朗となるだろう。
総合効率吟味における冷却塔電力と冷凍機効率の対比関係が変ってくるから(湿球温度が上がって、冷却塔に余り負荷を掛けなくて冷却水温度が上がっても、それなりの冷凍機効率を享受できるから)今後のフォローが楽しみである。
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