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東京電力・原子力運営管理部に緊急提言そのⅡ・始めに言葉ありき

 前稿では、取り急ぎ漏洩・火災の関連項目について、報告書の内容が皮相的なあまり、それでも幾つか疑問・矛盾点に引っかかったのを、こちらも同一レベルに降りて皮相的なスタンスでお相手したが、それだけで終わっては誠意が無い。
 労災を含めてもう少し突っ込み、可能であればより深いレベルの問題点と、対応策にも迫ってみたい。

 今回の騒動の一面は、震災後の膨大かつ短時間での復旧工事の施工の必要性の中で、多数の一定水準の作業員の確保、広範な区域・作業業種に亘る作業管理体制、なかんずく安全・防災体制の確立の面で、所在が地方都市である1事業所として展開可能な作業規模の上限に挑む試みである点である。
更にそれに加えて、またはそれにひきずられるように、従来の作業管理の弱点があぶり出されて来た面もある。
 この点を意識しながら再度目に付いた不具合事例と、労災件名を見てみるが、その前に今次震災の初期対応で感じた、もしかして不具合多発の遠因に繋がるかもしれないと思われることがあるので触れる。

 震災後の復旧の冒頭、「天井クレーンが壊れてその復旧に1ヶ月かかる。これが直ってから、詳細な主要機器ダメージの点検開始になる」という報道があった(範囲やディテールは間違っているかもしれないが)が、これを聞いて耳を疑った。
20年前、東電さんが156kvのOFケーブルのパンクを2,3日で直してしまったのを見たことがあるからである。
OFケーブルの補修は、油を抜く→必要な範囲のケーブルを新たに繋ぎかえる→油を入れ窒素で加圧する→耐圧試験という工程を踏み、外野の感じでは少なくても1週間から10日、資材の納期などと言う与件が入ると1ヶ月に手が届くだろうと思っていたが、瞬くうちに直してしまい、「大東電の威光を持ってすれば、メーカーだって何だって、出来ないことは無いんだな」と感心したものである。
 「それが今回、たかが天井クレーンの立ち直りに1ヶ月も掛かると言うのはどういうことか、レールを全長引き直すのか」と驚いた。勿論部外者の知らない、法手続き(これだって緊急時に、電気設備の検査前使用、試験使用みたいなのが認められるのではないか)、原子力内作業のクリチカルパス、更には「慌てて直しても放射線減衰待ちで、どうせ中には直ぐには入れないからゆっくりでいいよ」というような条件が有ったのかもしれないが、単なるメーカーや役所の駄々なら、従来なら技術力に裏打ちされた迫力で一発で粉砕していただろうと思われた。

○ 平均出力領域モニターおよび制御棒引抜監視装置の電源カセットの飛出し。20/4/25

 「ランプ表示等に使用するもので、装置の本来機能に問題は無い」
 「中越沖地震以降本来機能に対する、要求は無い」
 「中越沖地震による影響も含めて位置ずれの原因を調査」とある。

 上2項は、事象の影響の欄だから左程拘る必要は無く、そのまま聞いておけば良いんだろうが、ランプ表示電源であることまた本来機能の要求がなかったのはたまたまの僥倖に助けられただけであり、重要機能に関する電源だったらどうだったのか。
「ランプ表示電源であり、また本来機能の要求はなかったから重大には至らなかったんだ」で思考停止してしまうと。「軽度の不具合でしかなかったんだ」となって、それ以上の追求のモチベーションが希薄になってしまい、根本の事故要因まで至らなくなる可能性がある。今までのストーリーでもその様な思考傾向を覗わせるような展開があったので、あえて。
 原因の調査結果は何処かに出ているんだろうか。

 写真で見ると、本来は下に爪があって、これが掛かっているものは飛び出してない。
当該地震を体感してないので何ともいえないが、カセットの想像重さと、背面コネクターがあるはずで、そのグリップ力から考えると、爪の掛け忘れのものだけが、地震で飛び出したと言うのはちょっと考えにくいとすれば、定期検査中に発見とあるから、点検関連で誰かが引き出した可能性がある。筆者などは後者のような気がするし、そうだとすればちょっと過剰な反応のような気もする。
勿論後者であれば、不適合件名だからそれなりの話題になっているはずで、名乗り出が無いとなると基盤抜き差しの管理が出来てないということにもなるが。
 前者であれば、爪の掛け忘れのチェックと、中央監視室だから盤内も地震後の点検対象範囲にあったのではないか、ランプが「G」「R」などどれかが付いている設計だとすれば、9ヶ月間両方共不点灯に気付かなかったことになり、それぞれの点が指摘されることになる。
 しかしここで重要なのは、それよりも、これがもし発見されなくてそのままだった場合、何処かでリカバーする体制が確立されるかどうかである。従って、

 再発防止には、① 飛出しや爪の欠け忘れがあった場合、中扉が閉まらなくする。スペーサー取り付けだけで済むから簡単だろう。メーカーもこれからはこの様な、間違えようとしても物理的に間違えられないような点をどんどん取り入れた設計が必要になる。② プラント立上げ時や引渡し時など然るべきタイミングで、補修担当と運転担当が両者立会いで、飛行機の離陸チェックリストのように呼称しながらチェックしていく。等の対策が考えられる。
勿論、「そのまま気付かなくても、本番で機能要求が起こった時応動が無く、点検したら電源が抜けていて発見できるじゃないか」というのもありうるが、それが不具合多発の元である。
当所出入のメーカー作業員にも、この様なメンタリティの人が多い。若い人は殆どかもしれない。
 「応動が無い」と言うことに気付く担保も危ういし、気付かなければその上のトラブル惹起となる。また本番で発生した場合の時間・労力ロスも馬鹿にならないはずだ。
これは、誰かを標的にして嫌味を言っているのではない。筆者の基本的スタンスである。「これからは人間の監視や注意力 (今これが急激に低下しているから) だけに担保される安全は出来るだけ排斥し、「支援警報プログラム」「省エネの条件整備」ページにあるような、即変更可能ユーザーオリエンテッドのプレコーション対応監視システムが不可欠である」
プレコーション意識で先行して対処する癖が付いていると、ロスもリスクも激減する。

○ 低圧タービン火災20/11/22

 今までもそうだったが、報告書を読んでいて奇異な感じを受けるのは、執筆者は現場の当該作業の背景・実情を知悉し、認識をも共有しているのだろうかという点である。It's a little detached from reality.【ブーメラン、Robin Givens】
 「タービンの洗浄液が危険物であったにもかかわらず、危険物として扱う意識が不足していたこと。そのため防爆構造を採用していない洗浄機を使用していたこと」とあるが、このニュアンスからすると、当該発電所では震災復旧対応の面もあって、この作業は殆ど初めての体験であり、手探りでこれに取っ掛かったが、何度か失敗も重ねながら、作業方法を確立させようと言う試行錯誤の途中だったと言ようなイメージになる。
 全体工事の同時施工規模の大きさは兎も角、個別作業は手探りのはずは無く、会社としては何度も経験済み、作業方法から使用備品、薬剤の類まで一式全部そろって技術陣の知見・マニュアルの蓄積があるんだろう。
勿論その中に「危険物としての観点からの洗浄液に対する規定が何処にもなかった」とすると「元請となる協力企業に対し、当社が工事施行時の安全管理ができる体制となっているかどうかを確実に評価する」のなどは、やってもらってかまわないけど、精々が総花的事故防止対策の一環でしかない。
 色々拡散して筆者の記述力を越えそうだから1点だけに絞ると、今まで何度かこの点が疑問だっが「原子力は、メーカー指導員の招致は無いのか」と言う点である。それが有れば起こりえないと思う不具合が散見され、究極はこの事故である。
 参考になる実績が会社に無かったとしても、作業実績の蓄積はメーカーにある。メーカー指導員は1年365日その同様設備をメンテしているわけで、表面に頭の出たボルトの内側の状態まで知悉しているはずで、その指導によれば今まで出てきたような「蓋の閉め忘れ」や「配管の緩み」など起こすはずも無く、「洗浄液を危険物として扱う意識」が不足する事も無い。
 メーカー指導員の招致が少ないという実態であったのであれば、不具合の少なくない割合の防止対策は簡単である。どういう経緯(で少ないように見える)か知らないが、技術員招致のメリットの方が、不具合報告を何枚も提出するより、余程理にかなっているだろう。
 もしかして「指導員招致はあった。しかし作業員がそれを全く無視して、独断で仕事をしてこう言うことになってしまったから、反省して「元請となる協力企業に対し、当社が工事施行時の安全管理ができる体制となっているかどうかを確実に評価する」事にしたんじゃないか」と言うことかも知れないが、そうすると原因は「タービンの洗浄液が危険物であったにもかかわらず、危険物として扱う意識が不足していたこと。そのため防爆構造を採用していない洗浄機を使用していたこと」とは全然別の表現になるね。

 最後に確認だが、ローターは本当に火災の影響を受けてないんだね?
 「火災ではローターの表面は○℃、最終翼やシュラウドは○℃までしかなっておらず、消火作業に於ける冷却スピードも○℃/min程度だから、焼入の面でも焼戻しの観点でも材料性質に影響は与えてない。
また、上記は炎の側と反対側でアンバランスも無かったから、回転してからも応力の偏りなども起こらない。
 更に今回の温度変化でのローター寿命消費は1/○○○だから問題ない」と言う定量的解析が出来ていると信じて良いんだね。
 只「4極だから、3千回転の1/4の応力だ、大丈夫」だけで思考停止じゃないんだよね。これだけは頼むよ。

○ 非常用発電機燃料デイタンクのマンホールから軽油37ミリリットルの滲み出しをパトロールで発見 21/4/15

  新しい事象で、「滲み出し」と言う表現と、「こんな不具合だって、普通の現場ではそう見られたものではないよ」と言う点以外に特別言うことは無いが、20/4/4の漏油の供給元タンクであり、これがジーゼルと同じフロアーレベルなら、殆どヘッドは1m強となり、300ccの漏洩量に対するあそこでのもの言いはもっと強いものとなる。

 続いて労災を見てみるが、余りにも多いのに根負けして、8年度下期だけに限定した。
項目と対策および、それに対するちょっと引っかかる疑問点を併記してある。
「大半は筆者の斜視・無知・理解力に起因する疑問だろう。普通に読めば誰でも判る」と言われれば、それはそれでよいが、筆者の気持ちは、ためにするだけのイチャモンのつもりではない。
これだけの疑問の出る(チャチャが入れられる)程の対策と言うのは、本当に真摯に考えたものなのか、と言う指摘のつもりである。

○ 復水器の弁の点検準備中、架台上の開口部に足を踏み外し負傷 20/9/22
  対策:可能な限り開口部が生じない様に作業手順の見直しを図り、再発防止に努める。

 少なくても今回は、設備上の既設開口部への踏み外しであり、「開口部注意」の表示板もある中での事故である。
 表示板も注意を引かないのであれば、虎コーンの配置など物理的侵入防止が要るだろう 

○ ショベルカーで土留め板を押し込む作業中、添え板と仮設手すりの間に左手親指を挟まれ切断 20/10/14
  対策:定められた作業手順を遵守し、再発防止に努める。

 重機稼動部近傍の介添え的補助作業は、基本的にさせられないね。
 どうしても必要なら、年齢や運動神経などで峻別した作業員によることになるだろう。

○ 耐震強化工事に伴う防振器(140kg)の仮止め溶接が外れ落下、下の作業員に当たり骨折 20/10/16
  対策:同様の事象が生じないように作業手順の見直しを図り、再発防止に努める。

 図では仮止めの筈の防振器で既に配管が支持されている。
 仮止め状態であることの管理方法、周知方法、下部の立入り規制方法などに関する監督は居ないのか。殆ど無秩序に作業員が作業しているように見える。
 配管を付けたら落ちたと言う以外に、本付けの確認方法はあるんだろうね。また、本付けの仕様(溶け込み深さ等の)チェックは要らないんだろうね。

○ タービン翼の取付作業で、翼を押さえていた作業員の左手小指を、誤って振り下ろしたハンマーで叩き骨折 20/10/16
  対策:同様の事象が生じないように作業手順の見直しを図り、再発防止に努める。

 作業手順の見なおしとは、ハンマーでは叩かないと言う事か、手で介添えはしないということか?
 自分の思うところにハンマーを振り下ろせない(支持者の手を見てあそこに当ててやろうとは思わないはずだから)人に当該作業をやらせると言うことは翼そのものにも変形を与える可能性は大きい。
 ダイナミックバランスまで影響するとは考え難いかもしれないが、固定翼とミリ、コンマ単位で管理するはずのギャップの管理はどうするつもりなのか。「そんな部分は叩いてない。根元の肉厚部分だけだ」と言っても、その担保が無いんだよ。
 柏崎刈羽では、今後そんなのが1,500rpmで回る事になるのか?

○ ケミカルアンカーを挿入したが、誤ってカプセルを割り、破損したガラスで左手負傷 20/10/21
  対策:同様の事象が生じないように注意喚起するとともに、作業手順の明確化を図り、再発防止に努める。

 保護用手袋をすると手順にあった場合、それをより明確化するとは?

○ 基礎工事型枠解体中電線管の上に乗っていてバランスを崩し、手摺の単管接続金具に手を衝き負傷 20/10/23
  対策:同様の事象が生じないように注意喚起するとともに、作業環境の整備を図り、再発防止に努める。

○ 地盤改良のための装置を移動させる際に装置の下の鋼管コロと床の間に左手人差し指を挟み負傷 20/11/13
  対策:同様の事象が生じないように注意喚起するとともに、作業手順の明確化を図り、再発防止に努める。

○ ボーリング作業中の協力企業作業員がボーリングマシンの駆動部に左手小指を挿み負傷 20/11/18
  対策:当該ボーリングマシンの駆動部に、指侵入防止用の金網を設置するとともに、同様の事象が生じないように注意喚起を行い、再発防止に努める。

 当該ボーリングマシンだけ特別指が入りやすい構造上の特徴があったのか。
構内で稼働中のマシンはこれだけで、増える見込みも無いから、それで良いのか。

○ H鋼(6m、300kg)設置作業、位置調整中誤って落下させ(1.6m)1人が右手中指左膝を切り、もう1人が左足負傷 20/11/27
  対策:重量物落下災害等の同様の事象が生じないように注意喚起を行うとともに、作業手順書を見直し再発防止に努める。

 図と落下したことから、4名が頭上1.6mに300kgを支え持っていたように見えるが、監督は居なかったのか。もともと見直すべき「作業手順書」は有効に徹底されていたのか?

○ 杭打ち作業中油圧ホースの外れを整備中作業用ゴンドラを動かし、他の作業員がワイヤーと滑車に右手小指を挿み負傷 20/12/3
  対策:巻き込まれ災害等、同様の事象が生じないように作業者間の連絡・合図方法の徹底。
      また、突発的な事象が発生した場合もKYを実施するなど、安全確認を徹底していく。

 「安全確認を徹底していく」主体者を明確に指定する必要がある。
 作業者間で勝手にKYする。作業者間で連絡・合図するでは不十分だろう。

○ ケーブルトレンチ内に汚泥の流入の無いことを確認しようとして、高さ20cmの堤に躓き転倒、その1m下の主排気ダクトトレンチに落下、右腕負傷 20/12/8
  対策:作業箇所周辺に危険箇所がある場合は、転倒や落下防止などの安全処置を施すよう、関係者に通知する。

 果たして前もって、「ケーブルトレンチ内の汚泥の流入の有無を確認するとき、躓く」可能性に気付くか。
 転倒防止の安全措置とは「足元注意」の表示だろうが、安全表示がポピュラーになりすぎて、返って注意を引かなくならないか。20/9/22の開口部への足踏み外しのように。
 1mの落差は落下防止策対象範囲になるか。

○ 放射線管理区域境界のアルミ製敷居に左足を乗せたときにバランスを崩して転倒、左足負傷 21/1/24
  対策:靴履き替えエリアーに滑り止めテープを張り、敷居の上に「乗るな」の表示。

 滑り止めテープが逆に正常な歩行を阻害しないか、それともその抵抗が注意喚起に繋がるか、確認を要する要素がありますね。

○ 地盤改良工事中、固化剤送気ホースの清掃後通気を確認しようとして空気の反動で転倒、20m先の作業員に固化剤が当たった 21/2/4
  対策:飛散防止養生

 飛散防止も良いが、20m跳んだと言うことは、上方も囲うことになるんだろうか。
 本人の転倒は問題ないのか。安全な通気確認方法が必要。

○ 仮設足場の開閉式足場板の上に塗料バケツを置いていたら、下から上がってきた作業員が足場板を押し上げ、バケツが落下、足場近傍4.5m下に居た別の作業員に当たった 21/2/17
  対策:四面に落下防止ネットおよび落下防止紐と蓋付き用具の使用等安全措置を施す。

 安全を見る監督は居ないんだろうか。
 メーカーマターだが、強化プラスチックなどの透明足場板も良いね。

○ 原子炉ウエルの除染作業中に体調不良を訴えた。脱水症状 21/2/21
  対策:体調管理のため、休憩や適度な水分補給を心がけるよう注意喚起する。

○ 仮設架台撤去時、鋼材(85cm×85cm×4.3m180kg)のボルトを緩めたら片側が落下し、下にいた作業員の当たった。 21/3/23
  対策:取り外し部を予め仮受け処置を施してから作業を行うこととする。

 正解だと思うが20/11/27の事故後なぜそれが実施されないでいたのか。

 折角の対策内容を有効にするための注意事項を伝授するとすれば、
① 対策実施者を主語として明確に表記する。出来れば朱筆。
 協力企業を含めどのように、通達し掲示し徹底しようとしても、聞く方が自分のことを言われていると思わなければ是正しない。
② 逆説的だが、水平展開などしようと思わないこと。
 現状の器量ではそれを狙うと却って抽象化した表現と内容になってしまうが、「広範な範囲を網羅したから止むを得ない」と言う内心の自己弁護も可能になり、具体的に何をすべきか言った方も聞く方も判らなくなってしまう。
 取りあえず、今回の事故に限って、再発防止はどうすべきか考える。
 ここで「ボーリングマシーンはあれだけじゃないだろうと言ったじゃないか」と返せば、本質論の判らない資質が露呈する。


 それでは以上見てきたことを纏めて、筆者の考える不具合防止対策について説明する。
重要かつ効果的なものから数えて3つある。(本当は技術作業員の社会的地位と処遇の改善という、根本的問題提起〈「俺はセレブだ、奴等は技能見合いの低給で可愛そうに」と束の間優越感に浸っても、常に彼らのメンテする機械に命を預けざるを得ない。彼らの技量が落ちれば ۵ と言うこと〉があるが今回は間に合わない)

① 「常に、声を出して自分の次の行動を自分と周囲に申告する」アクションを全員に導入する。
  これは2つの面でのメリットを期待するものである。
 当所でローリングタワー(高さ3.6m、床面1.8m×1.8m×足場板敷設率50%)に乗っていた時、JVの若い人が誰にともなく「○○(彼自身の名前)さん、鉄骨に上がります」と申告してから、さらに上のH鋼梁によじ登っていったのを見て驚いた。
狭隘の高所足場の上でも一緒に居る相手の次の挙動がよく判り、互いの行動にとって極めて安全だからである。教育の行き届いた会社だなと感心して「お宅ではそんな教育をやっているのか」と訊くと、彼氏が編み出した手法だと言う。
その後、チャンスがある度に若い人の安全教育で披露している。
 柏崎刈羽の例でも、これをやれば防げた労災が幾つかある。

 それよりも、これの効用はもっとメンタル的な面にある。
 人間は何気なく歩いていると、平地でも足を取られることがある。要するに無自覚だと、どんなに安全標識をぶら下げても効果はない。周辺環境に自らの安全を脅かす要素が潜んでいても想像できない。
 「ご安全に」と言われても耳にタコで聞いてない。前頭葉が働いてない。聞いていても自分の行動として何をすべきか判らない。そして躓く。
 ところが声に出して発言すると、前頭葉が光り、「ああ自分は今これをやろうとしているんだ」と自覚できる。意識が明瞭になってくる。不思議なことに不安全な行動は是正される。

 一人指差呼称でも、声に出すと出さないでは大きな差が出る。例えば定修等で「2号ボイラー」「2号ボイラー」と言う言葉が耳についていて、無声一人指差呼称で無自覚に「2号給水ポンプ起動」とやっても、3号給水ポンプを起動してしまう場合がある。
声に出すと、それだけの精神的負荷だから、まず目で「2号」か「3号」かを読み取ろうとする。
次いで、間違って「3号給水ポンプ起動」と言っても、最近耳についている「2号ボイラー」と言うキーワードとの乖離を耳または口で判断できて、間違いに気付く。更にそれで気付かなくても、回りの人間の耳に引っ掛り「2号だろう」と教えてもらえる僥倖もある。
 ことほど、発声することは重要であるが、更に意識の覚醒の面では大きな効果がある。
ポイントは微少の精神的負荷である。これに対処するため、意識の覚醒がおこる。
ただ漠然と行動するのではなく、常にこの様な発声で自らの行動を規制し、明確な意識で行動する時、事故の大きな誘因は無くなる。
 上記労災事故例を順に例えれば、
「ただ今前進中。足元に開口部なし」と声に出して唱えていれば、足を踏み外さない。
「ケミカルアンカー挿入作業中。保護手袋良し」
「今電線管に乗っている。バランスを崩して手すりにつかまるのはあそこだ」
「これから機械を動かす。指を取られない様に注意」
「これからマシンを見る。指を取られない様に注意」
「鉄骨を上げるが、この人数で良いか」
「ゴンドラを動かす。周辺錯綜作業員なし」
「ただ今前進中。足元に障害物なし」
「エアー出具合確認する。ホースが振られないよう支持した」
「バケツを置く、ここは固定床で落下なし」
「足場板、上げるよー」
「鉄骨を緩める。下は無人」
 この様な発声で自らの行動規制と、危険予知を具現化してみせるとき、あのような事故は防げるだろう。作業員の安全意識は一挙に向上する。
またある意味、自己を守る、周囲の人を危険にさらさないと言う宣言でもある。初めに言葉ありきである。
安全災害撲滅にはこれを強く推奨する。即効性はこれしかないだろう。
 常時と言うと、最初は抵抗があるだろう。しかし本気で事故撲滅を願うなら、「声に出さない行動はしてはならない」位の強い意志で徹底すれば、たちまち作業員意識は目覚め、相互コミニュケーションは強固なものとなり、無事故無災害が出現するだろう。
 これに比べれば、以下の対策は2次的なものである。
東電の人見てるだろうか。関係者は東電社員に教えてあげてください。貴方独自のアイデアだと言うことにしても一向に構わない。
 「防塵マスクで発声しにくい」と言うのは、やらない理屈である。声が外に出ないものは、コミュニケーション効果は無いにしても、前頭葉覚醒は間違いない。

② 強い権限の安全監視要員および火災予防要員の常時パトロールを行う。

 労災内容を見ると、作業監督の影が薄く、個々の作業員がそれぞれ勝手に、①項とも通ずるが互いに声の掛け合いも無く、無秩序に作業をしているような感じをうける。地盤改良のための装置の移動、ショベルの介添え、仮設鋼材の落下などはその例である。脱水もそうかもしれない。
有る意味素朴で懸命な、作業員の姿勢を纏め上げることが出来ず、逆にベクトルを拡散衝突させて労災を起こすことになってしまっている。
 作業単位でみても同様である。個別の小単位作業が、互いの関連を気にすることなく、錯綜作業を遂行している。この場合スーパーバイザー的監督が要るが、報告書からは存在の形跡が読み取れない。
固化剤ホース通気時の転倒、仮付け防振器の外れ、塗装バケツの落下もそうだろう。
 危険物火災についても、監督は何処にも出てこない。

 昔一時期、請負工事に於ける労災事故の責任が及ばないように、発注者は工事施行方法の特に安全に関しては何も言わない、責任が遡及されそうな文書も出さないと言う風潮が瀰漫したことがあって、文書の内容まで茶々を入れられ、正反対のメンタリティの濃い筆者なんか内心反発したものだが、役所的企業にはまだ残っていたのか?
 長年それで大過なくやって来れて安穏としている内に、現場作業を見る目を失い、ところが一方「原子力発電会社」と言う看板は更に重くなり、とても「安全は施行方法の問題です。それには直接タッチしていません」と言う言い訳は通用しない時勢に、震災と言う契機に見舞われ、冒頭に書いた1事業所で展開できる工事規模の限界に挑戦と言う事態になり、従来の付け(低品位品の稼動など)と相まって問題点が一挙に顕在してきたのが現状か?
 
 細かく広範に亘る危険物関連規則をたくさん編纂し、関係者に満遍なく徹底しようとしても、「それを守るのが、作業側の責任だ」と思っても、余り効果はない(勿論、当然法遵守のための人員は充足するんだよ)。返ってそれに気を取られるあまり、他の安全対策が疎かになる可能性も無いとは言えない。
 事業所で扱う全ての危険物について、揮発ガス比重、燃焼範囲、着火温度、爆発範囲などを熟知した火災予防要員を管理区域ごとに常時パトロールさせ、スペシャリストとしての目で火災の要因が潜んでいると思われたら直ちに是正させる権限を与える。
 当然、可燃ガス濃度測定、有効な初期消火設備の配置、帯電可能性の有無などの点検なども合せて実施する。
 同様に労働安全に対してもスペシャリスト要員を常時パトロールさせ、徹底して労災の目を摘み取る。また突発な手直し工事が発生した場合は直ちに、安全監視要員に連絡し、注意事項の指摘を受け、作業員が理解したことを確認してもらってからでないと、実作業に入れない。

 「そんな体制は実施済みだが、相変わらず事故は起こるんだ」ということなら、監視要員の資質の問題でなければ、再度上①項の話題に戻り、「全員・常時発声」が出来てなければ、隗から始める。
 監視要員から声を出して、指示・注意を交換すれば、それだけでも危険の芽は減っていくし、徐々に作業員に拡大していけば①項導入への抵抗も少ないだろう。
例えば「これを人力で動かそうとすると指を挟む可能性があるね、監督さんジャッキは無いの?」「ショベルの介添えは、梃子の原理ではね返るから、貴方直ぐ逃げられる?」というような、口頭での直接作業員に対する細かい注意である。また「いざと言う時に、どう逃げるかやってみて」と言うのもあるだろう。
 更に、当該要員は、作業完遂の目標に対して1対の上下関係を形成する監督と作業員の間を、安全を媒体としてもう一つのコミュニケーションパイプで繋ぐことが出来る。要するに「この作業方法はかなり危険な気がしてならないが、上には逆らえない」と言う1方通行のカバーである。

 もしかして、安全管理体制評価プロセスとして「元請となる協力企業に対し、当社が工事施行時の安全管理ができる体制となっているかどうかを確実に評価する」事にしたので、これから安全パトロールももっと機能するだろう。と言うかもしれないが、そんなもの確実に評価できてどうするんだ。何時まで理屈の世界に没頭すれば気が済むんだ。またぞろ管理会社の癖が首をもたげて来たか?
相手の問題じゃなくて「原子力発電会社」の看板を掲げざるを得ない自分の問題だろう。
 「評価プロセス」などと格好つけてる間に何故現場に飛んでいって、ずかずか入っていって「こんな作業じゃだめだ」と直接指摘が出来なかったのか。安全担当も含めて旧態依然のメンタリティなら、期待しているらしい「評価プロセス」を踏もうが踏むまいが、何も変わらないよ。

③ メーカー指導員招致範囲の大幅拡大。

 これは作業の技術品質の問題であるが、説明は不要だろう。
 しかし、不祥事リストに、メーカー指導員が居たら起こらないだろうと想像される事例が散見されるのは何故だろう。
 彼ら(大半のメーカーの彼ら)は、one of them では無く「今、会社の看板を背負っている」と言う意識があるから、モラルと矜持は高いよ。中途半端な仕事は絶対しない。こちらから必要なお願いはするにしても。
 「協力企業の総力を結集して、全ての作業をこなしてみせる」と言っても、協力企業そのものがえらいさんの天下り先で、そういう人達に限って現場に疎いから、社風が親会社と同じミニチュア管理大好き会社になっていて、本来なら現場作業の汗と特性を知悉して親会社を補佐、場合によって指導すべきところが、それが満足に出来てないんだろうね。
 「管理大好き会社とは言い過ぎだ」と言う反論があるかもしれないが、それが垣間見える例を挙げれば、開口部への足踏み外しの写真がある。ちゃんと「開口部注意」のパネルが吊り下げてある。「我々はやることはやっている。設備上止むを得ない開口部だからちゃんと注意は喚起してあるのに起こったんだ。我々に瑕疵は無い」と言わんがために使ったのかも知れないが、筆者が責任者ならこんな写真は載せない。「目の前に注意書きがあるのに、事故は起こった」と笑われるのが恥ずかしいからである。
 「恥ずかしい」これは技術的矜持を維持する1つの重要なモチベーションではないだろうか。「『目の前の注意書きにも拘わらず事故は起こってしまった。その原因はなんだろう」とステップを踏み出すのが、他の中小企業なら兎も角、大型設備工事をこなす電力のリーディングカンパニーとしての本来の取組みだろうに、全社そんな感受性も喪失か?』と笑われるのは嫌だから、更に突っ込んで基本的な原因と対策に迫ってみよう」となるからである。それが開口部が生じない様に作業手順の見直しを図り、再発防止に努めるらしい。
 これは既設備の開口部だったんだろ?「既設だろうが仮設だろうが開口部が減って、事故要因が減るじゃないか」と言うだろうが、表示にもかかわらず踏み外したと言うのは相変わらず残る。お宅の再発防止対策の多くは表示など注意喚起の徹底なんだよ。それに実際に開口部を生じないようにした事例が知りたいもんだ。偉そうに言っているが、筆者のソリューションは①に既述だからね。
 「恥ずかしい」と言う感受性が有れば、事故報告書の半分は書き直しになる。

 さらに仕事の仕上がり品質は、それだけでは説明できないレベルの低さがある。
理由は判らないが一般的傾向に筆者の妄想を加味するならば、協力企業といっても、親会社ビルの管理や消耗品・薬剤・樹脂類・油脂類納入のマージンピンはねトンネル会社 (利益の半分は本当の納入業者の涙、半分は電気料金上乗せから来ている。対料金比率は高くないが。そして行き先は天下り役員のポケット) なら、その程度のメンタリティでも何とか大過なくやっていけるだろうが、峻厳たるトップ技術とは対峙できない。
 定年前の親会社の現場部課長クラスをどんどん受入れて、(と言っても勿論、技術の根幹は親会社に残しておかなければ、普通のトラブル報告書もまともに書けなくなってしまうが) 彼らに現場の中心となる若手を鍛えなおしてもらって初めて少しは格好がついてくるが、十分ではない。
 技術の真髄はやはり、メーカーの叩上げ技術指導員のノーハウの伝承だろう。
 ここから筆者の妄想に入るが、「1日10万円の技術者をどんどん招致されたら、親会社の修繕費・設備費のうち我々の取り分が大幅に減少するから、大抵の事は自前で出来るからやらしてください」と言いつつも、現場疎遠のため必要な技術組織作りの方法がわからず、問題点を吹き上がらせたのが現状じゃないのか。
 更に、問題点が噴出しても「後半年で俺はここも定年。2度目の退職金をがっぽり貰って、後は頑張ってね♡」じゃ目も当てられなくなる。
 もしかして、安全管理体制評価プロセスとして「元請となる協力企業に対し、当社が工事施行時の安全管理ができる体制となっているかどうかを確実に評価する」事の必要性を認識し出したのは、この辺を暗示しているのではないか。

 震災からの早期復旧と周辺の運転再開同意獲得という現在置かれた立場から考えると、餅は餅屋、メーカーの技術の導入範囲を大幅に拡大しても良いのではないか。
 自社や協力企業のレベルアップにも繋がる。

 以上だが、本社のお偉いさんも、早急にこれらの対策を (特に騙されたと思って①を) 何が何でも取り入れるよう指示すべきだ。減給等の処分に甘んじたとしても捲土重来を期す仕事の最初のステップである。It should be the first on your list of things to do today.【トランスポーター、ジェイスン・ステイサム】
 しかし処分理由が火災に限定されているように見えるのは、相変わらずそれ以外の労災は、上②の考えのままなんだろうか。(そうするとこれは火災と労災の法整備の違いになるが、ますます広がりそうだから止めよう)

 筆者も個人的には、現場復旧工事に参加したくてウズウズして来た。これだけの問題山積の現場で、自分が口先だけでなくどれだけの実績を挙げられるかと言うのは、今の仕事(省エネとデータ解析)より余程血湧き肉踊りそうだから。

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