冷却水半減で省エネ?
「営業コンサル」ページの雑談 tips で「吸収式なら冷却水量はそのままで、部分負荷にした時のCOP向上によるガス・蒸気代削減とどっちが得かの検討も是非。出口弁を絞るだけなら、断然こちらに軍配」と言ったが、本当かと言う疑問もあるだろうからこれを検証してみよう。
当所の吸収式3号機は冷却水ポンプが2台有り、冷却水量半減運転が可能である。この運転データから計算してみる。
まず、冷却水量半量 (変動するため650~750m3/hの範囲とする) で運転した時のデータを採取する。期間は出来るだけ多くのデータを取れるよう2006年5月1日~2008年3月22日とした。製造冷熱は14.9GJ~9.6GJの範囲に分布している。
次いで、同じ期間のかつ同じ製造熱量範囲の冷却水量全量 (定格は1371m3/hであるが、1300m3/h以上とした) 運転した時のデータを採取する。
これを対比すると、下表になる。
冷却水量半量の時の平均COPは1.40に対し、同等製造熱量で冷却水量全量の時の平均COPは1.55となった。「ほうら0.15も有利じゃないか」と言っても良いが、冷却水温度が下がっている。また負荷率は上がっている。前者は全量運転に有利、後者は半量運転に有利に働いる筈である。
この補正を arcop.exe を使ってやってみる。 arcop.exe は吸収式1号機のデータであるが、傾向的に左程変らないし結果論として補正のウエイトも小さいし、諸兄が直接操作できるものだから、復習の意味も兼ねてこれを使う。
相関曲面で適宜右クリックすると下のポリゴンがピック出来る。全量・半量のそれぞれ平均 (の差) に対応した点のつもりである。
「その位置は回帰式面です cop = 1.47 _ load_factor = 50.00 % col_tmp = 28.40 'C」
「その位置は回帰式面です cop = 1.50 _ load_factor = 56.00 % col_tmp = 27.40 'C」 (下図)
従って、冷却水温度および負荷率での COP の差は 0.03 であり、冷却水量全量・半量による純然たる差は 0.12 となる。
ポンプ動力減がこれより大きければ、冷却水量を半減するメリットがあるし、その逆の場合は止めた方が良い。またインバーターなどの設備費が何年でペイするかを算定している場合は、COP 低下に相当する金額分伸ばす必要がある。
時間の平均値で考えると、半量運転のCOP 1.40 に対し冷却水量全量にすれば 1.52 となる事になる。この差は蒸気の場合 3.870ton/h から 3.535ton/h へと 0.335ton/h 減少する。一方で当所3号機では冷却水ポンプが1台→2台運転となり実際の電力量差はちょうど 100kw である。蒸気製造単価と電力従量料金的にはほぼ等しいのではないか。(あやふやな言い方は今後の両者の料金動向が不透明である事に起因する)
従って、当所ではここの運転は全量で行くか半量で行くか、経済性で悩む必要は無い。どちらでもやりやすい方でよい。但しガス炊きの計算は出来ていないので、該当プラントの方は同様に計算して悩んでください。
一方 CO2 で比較すると、蒸気分減 57kg/h 電気分増 36kg/h となり、全量でCOP増を享受した方が有利である。( CO2 原単位は余り厳密ではない。誰かがこう言うことにしておこうと決めた数字だから適当に入れてもらえばよい。自分んちの冷凍機がどんな傾向を示すかを検証する方がよっぽど重要)
ここで「出口弁を絞るだけなら、断然こちら者に軍配」と言う言葉が検証できる。ポンプモーター入力が流量に比例し、流量半減で電力も半減する場合にちょうど吸収式のCOPの差と経済的に均衡する。従って全量ポンプ1台運転で出口弁を絞ってモーター入力を減らしても却って損になるわけである。揚程増を来たし、左程電力が減らないからである。「ポンプのオーバースペックの影響」参照。
吸収式の負荷特性は、当社のが特別な訳は無いから、何処でも大なり小なり同様の特性であり定性的に間違ってはいないだろう。後は貴プラントの特性を分析してみる事である。ツールは当 blog に置いてある。regsup2.xls が有益のはずである。あとのプログラムのソースは使ってやろうと言うメーカーさんに差し上げる。
再度ビデオで確認してみる。
また面白いことに、冷却水量全量の方が溶液濃度が1%程度低くなっている。これが効率の良い原因であろう。冷水温度は低いから「annoying result.」でみた「冷水温度が高くなると、蒸発器の蒸発温度、蒸発圧力が高くなり、蒸発した冷媒は溶液の濃度が低くてもよく吸収されるようになります。即ち冷水温度が高いほど溶液濃度は低くなり、再生器における溶液温度も下がってきます。これはいいかえると、煮詰める温度も濃度も低くてよい訳ですから、燃焼に要するガス量もその分だけ少なくてすみます。」と言う状況とは違う要素が支配していることになる。また負荷率も高いのに、である。それぞれの平均値同士を代入して溶液濃度を出すのは気が引けるが、各構成データが全て同様の値になっているから、個々に計算して平均してもほぼ同じだと思われる。
さて、それでは一方のインバーターはどうなるんだろう。設備投資が何年でペイするかと言う観点のストーリー立ても多いだろうから、年ベースの数字で見てみよう。
半量運転が当所3号機のように250時間/年あるとして、流量半分でインバーターによりモーター入力半分と言う場合は蒸気量削減 84ton と電気量削減 25,000kw のバーターとなる。
この辺がバランス点であるが、インバーターでは状況により更なるメリットが生じる。それは運転状態によっては必要揚程が低減してくるからである。即ち当該冷凍機の冷却水系統の各部差圧は流量の2乗に比例するから1/4になり、冷却水母管の差圧が一定でも (統合冷却塔の場合で、他の冷却水ポンプがかなり運転していても) その分ポンプ揚程が少なくて済む。さらに当該冷凍機の冷却水量が支配的な場合は冷却水系統全ての圧力ロスが1/4近くなり、一定なのは冷却塔上下の水頭差だけと言うようなことになる。インバーターがこの低減も拾ってくれれば、大幅な電力減になる。
一例として、冷却水量半減で電力が1/3および1/4になるとして、年間250時間この様な運転ケースがあるとすれば、下表の通りである。従って、インバーターを導入して何年でペイするかと言う計算には、冷却水量半減で電力が1/4になったとしても、蒸気はどれだけ増えるか、このケースでは年間十数万円のメリットで算定しなければ片手落ちである。
また、 CO2 の低減に関しては冷却水量半減で電力が1/4になる場合でも、蒸気量を減らす方が有利である。
勿論運転チャンスが増えればメリットも増えるし、もともとあるポンプのオーバースペックを解消しようとする目的なら別の計算が成り立つ(ポンプのオーバースペックの解消だけなら、余程極端な場合に35%程度の削減が期待できる場合がある)が、ここでは半量と全量の比較だけに絞った話であり、またガス炊きは定量的に把握してないので念のため。
| 年250時間半量運転する場合の比較 | 増減 | 製造原価従量料金k\(typ.) | CO2-ton | |||||
| ton,kwh | 増減 | 差引き | 増減 | 差引き | ||||
| COP1.401→1.522の蒸気量減 | 84 | 250 | - | 14 | - | |||
| 冷却水量半減で電力1/3の場合 | 33,300 | 330 | 80 | 12 | -2 | |||
| 冷却水量半減で電力1/4の場合 | 37,500 | 380 | 130 | 13 | -0.7 | |||
この辺まで立ち入らず、インバーターによる電力削減だけが一人歩きする傾向が多いが、思うに電力削減などの単純に目に見える効果は誰の目にも見え、「今月は幾ら減らしました。料金は幾ら減です。」と言うような話は素人にも判りやすいからであろう。その反面冷却水流量が減った分、場合によっては効率が下がっているはずであるが、これは負荷率・冷却水温度など色んな要素で変動しているから、詳細に分析してみないとわからない。従って両者の得失併記の総合検討になかなかお目に掛かれないことになる。まさか作為的に埒外だなんてことは無いんでしょうね、冷却水量半減やインバーターを推奨するコンサルさん。
この主張は、
You've told me that a thousand times already.
You've told me that a million times already.
You've told me that a billion times already.
等で更に明確に正しいことが判ってくる。
夏季ピーク電力調整期間に於ける冷却塔ファン運転も同様である。「冷却水温度と湿球温度との差」ページで見たように、湿球温度が高い時の話は論外としても、ファン台数も (極数も) ギリギリ押さえ、電力量を減らして「今月の調整量は幾らでした」と自慢する。湿球温度が極端に高い場合はともかく、それより多いガス代が掛かっているはずなのにである。勿論 CO2 についても同様である。
要するに、一義的に表現できる値の削減は一言ですむから誰にでもわかるが、種々の要因により変動する値の分析は判りにくいから、良くて敬遠、悪くて恣意的に目を逸らされているのではないだろうか。
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