溶液結晶温度の挙動
さて、冷却水温度を下げれば効率が上がることは確認できるが、冷却塔電力増は許容出来るとして結晶温度との関係で何処まで下げられるかという検討課題がある。
貴プラントの冷却塔が思いのほか能力に優れ、少ない電力で低い冷却水温度が望めるとして、余りどんどん冷やしていると、臭化リチウム溶液がシャーベット状になってくる。
結晶化の危険はマニュアルに書いてあるし、機械的にも防護装置が設置されているが、時々発生して問題になっている。
冷凍機には結晶防止装置や自動結晶解除装置なるものが一応設置され、設備上の対策はそれなりにあるものの、場合によってはメーカーの技術者が悩むような、深刻な事態に陥る時もある。
デューリング線図から想定できるが、これは吸収式が能力いっぱい出力している時により発生しやすい。逆に言うと、冷凍機効率の高い部分負荷時は結晶に対しては余裕が生まれる。
ビデオで確認してみよう。
吸収式の冷却水温度のメーカー推奨下限は24℃程度で、またメーカーによっては特性表に22℃の線を引いているところもあるが、負荷率をパラメーターにした数値は、寡聞にしてみたことが無い。「そういう難しいことを条件に入れるな」と言うことか。
ユーザーとしても、機器の運転状況、特に結晶解除装置のオーバーフロー管の温度等を見ながら冷却水温度低下テストを行い、「当所の機械ではこれが限度」などと運用制限値としているところもある。しかしそのテストは負荷率いくつの時だったんだろう。
省エネだ、吸収式の効率を少しでも高めようと言う時、負荷を低くしてもう少し冷却水温度を下げられないか。
勿論「うちの冷却塔は経年劣化もあり、能力も低下していて、定格温度さえ維持できないのに、そんな贅沢な考えは出来ない」というプラントは、このアイテムとは残念ながら無縁である。しかしここを押さえておく事が、後々大きなメリットに繋がると言うのも事実である。「湿球温度が何度以上でだめなのか」と言うことも分かってくるだろうし、「老朽化で早めに冷却塔を手当てするか」と言うのも出てくるだろうし、その場合「もう少し性能アップを図ろうか」と言うことにもなる。
当所は今般監視装置改善を行い、冷水流量調節計のSVを遠隔操作可能 (オートマニュアル切り替え、SV,PS,MV,PID変更) として吸収式の部分負荷を積極的に省エネに活用しているが、もう一つ吸収冷凍機の高圧再生器の圧力と温度をリアルタイムで遠隔監視可能とした。
このニーズは別の所にあって無理やり追加してもらったものだが、
期せずして、それらの値から直ちに高圧再生器溶液濃度が算出できることになっていた。
(① 高圧再生器圧力→高で吸収冷凍機がトリップするためそこまでの裕度を監視する
② 高圧再生器温度→起動時にある温度まで蒸気制御をoverrideする機構になっているためその監視)
高圧再生器は結晶の可能性の有る部位とは最も離れているが、若干の補正で結晶が発生し易い所の濃度、更に濃度から一義的に決まる結晶温度が計算できるはずである。但しパラレルフローとシリーズフローでは高再と濃溶液濃度の関係が逆なので注意する。
これにより、各号機の濃度及び結晶温度がリアルタイムで計算、表示できることになったのでダウンロード arltbr.exe (597.0K)を実行してみて欲しい。
ビデオは以下である。
また、3D図にしたビデオもある。
説明は下図の通りであるが2,3補足すると、
計算できた高再濃度は安全を見て、パラレルフローではこれより-1%、シリーズフローでは+2%の濃度の濃溶液となり、十数秒遅れで吸収器に到達すると仮定している。
これによる結晶温度と実際の濃溶液温度との差を見るわけだが、残念ながら濃溶液温度は遠方監視データに取り込んでないので、ここでは冷却水入口温度+8℃の値で代用している。
実際は10℃以上高いので、ここでも安全の余裕を見ていることになるが、実機では変動幅はもっと大きい。
両者の差の緊急度を色で表せるようになっている。真っ赤は5℃ (実際には8℃以上か?) 藍色に該当する温度は可変である。即ち温度区分は20有り、1区分当たりの温度を変更することにより色々な特性の冷凍機にもマッチした色合いで監視できる。
当該プログラムのプリセットは0.6℃である。データ採取した号機が最も濃度が高いため、区分を細かく設定した。他号機ではこの設定では青色一色である。
この辺は自由に触ってもらってよい。(但し書換え途中で一瞬空白になった場合にプログラムが読みに来ると癇癪を起こすみたい。「エラー処理しろよ」)
データは3時間分取り込んで埋め込んであり、3秒毎に表示されていく。勿論そんなに眺める物好きが居るわけは無いが。また「余りに遅い」または「そんなのに何時までも付き合っている暇は無い」と言うことなら、10倍早送りが出来る。
また、例えば吸収式の入力 (蒸気またはガス) が変化したら、溶液濃度がどのような挙動をするかがみえる。
この延長線上の結晶防止対策を実装しているメーカーもあるようだが、挙動が数値的に提示されれば、オペレーターの手動介入 (減負荷前の先行調整含む) 等により結晶防止対策は更に強固になることが期待できる。
「人的介入を前提にした対策は如何なものか」と言われるが、結晶に近いところの運転は全負荷で突っ走っている時か、減負荷開始初期であるから常時見ていなければならないわけでもない。ここで冷却水温度に注意すればよい。
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